経済のグローバル化がもたらす格差とアジアの人々に与える影響

前回のオリエンテーションから2週間、経済学者であり早稲田大学名誉教授の西川潤氏による講義があり、
貧困の定義、絶対的貧困と相対的貧困の関係性、経済のグローバル化がもたらす格差とアジアの人々に与える影響などについて議論しました。


【プログラム】
・参加者紹介・・・塾生とリソースパーソンそれぞれの自己紹介
・塾生の発表・・・課題レポートを元に約10分のプレゼン
・リソースパーソンからのコメント・・・西川先生による今回のテーマに沿ったプレゼン
(休憩10分)
・全体討論・・・約1.5H、それぞれのレポートへの意見


西川先生は、現在の資本主義がもたらす格差に関することや、ASEAN諸国や東アジアを訪問し開発や貧困に関する調査を通じて数々の経済本等を執筆しています。また、アジア人権基金の設立やアジア連帯経済フォーラム等にも参加されています。


東洋的思想はグローバリゼーションを包括できるか

アジアにはガンジーの「アヒンサー」(非暴力、他人を愛すること)のような独自の発展・開発概念が存在する。市場経済一元化のグローバリゼーションのなかで、アジア独自の施行は存在意義を失ったのだろうか?という問い。

現在の社会を形成したのは西洋諸国なので、人種的にも文化的にも西洋が優れていてそれ以外は劣っているといった意識や感覚は少なからず持っている人は多い。西洋人に対して遠慮したり、Noと言えない日本人になってしまうのもそういう意識に寄るところ。その西洋的な考えが世界的に文化や教育によって植え付けられていることで、支配するもの、されるものの構造が国単位から個人間までも社会に定着したと言える。
人類は他の動物に比べ単体で生き抜く力がとても弱いから自然界で生き抜くために「社会性」を持って恊働し発展してきた。こうした人類の発展の根源ともいえる「社会性」は、奴隷文化を背景に発展してきた支配的な西洋思想よりも、自然を敬い生きとし生けるものと共存する東洋思想が弱者救済の考えに寄る所が多いのではないか。日本の「お裾分け」の文化もこれ。
相手に見返りを求めず、良い行いは必ず自分に返ってくるという発想も、地球規模での支援に大きな役割を担える。アヒンサーのような思想は過渡期を迎えた20世紀型の価値観を包括できるのかもしれない・・。



西洋が注目する東洋的思想


meditation

最近では西洋医学の先端を行くドイツで、インド・スリランカの伝統医療であるアーユルヴェーダが注目され、欧米全体で見てもヨガやマクロビオティックなどのライフスタイルや、Googleやインテルなどのグローバル企業も休憩時間にメディテーションを取り入れることなど、文明の最先端を行く先進国や会社が、東洋医学に注目をし始めるようになった。

こうした流れは、20世紀型の大量消費・大量生産の反動から来るものと思われ、仕事と家庭のバランスの悪さが個人の心身共へのストレスの蓄積となり、一見、華美で豊かで幸せに過ごしているように見えた生活も、表面的な満足しか得られず、本質の幸せを見ようとせず誤摩化し続けた無理が現在の先進国で特に表れていると考えられる。



意識のグローバル化


demo

経済のグローバル化により特に途上国では貧富の格差は広がるばかりで、インフレや環境破壊、テロの温床が進む要因になり、日本でも大企業ほど税金の優遇など受けられるため、先進国でもますます1%と99%の構図が浮き彫りになっていく状況だ。アメリカやオーストラリアなどでも大規模にデモで訴えている。日本では大きく報道されないが・・・。
もちろん経済のグローバル化がもたらす利点もある訳で、外資企業が途上国で工場を建設し雇用を生むことや、先進国の生活に役立つ商品が安価で手に入れられやすくなるなど、結果ある程度の貧困から救われる人たちもいる。

しかし、
その商品は本当に良いものなのか?
安価で便利だけど、体に害はないのだろうか?
環境破壊につながらないのだろうか?
雇用されたけど、長時間労働させすぎなのではないか?
雇用者は安月給なのに、仲介業者やグローバル企業が搾取しすぎでないだろうか?

そんな疑問は目の前の生活を改善することしか考えられない知識や情報の乏しい途上国の人にとってはとても考えにくい環境だ。だからこそお金を使う側の使い道はとても重要であり、長期的に見て本当に目の前の人にとっても社会にとっても良いプロジェクトなのかどうかを考えるのはもう今の時代は必須だと思う。私欲を肥やすための行き過ぎた資本家による独占的な資本強化は、社会構造をよりイビツなものにするだけで、いつまでたっても格差の上下でナンヤカンヤともめる原因を作り続けるのだと思う。


graph

以前世界の上から85人の超富裕層の資産と貧困層を含めた下から35億人の資産が一緒だというニュースがあった。
今の時代は格差が当たり前であるからこそ、長期的に格差をなくす理想を掲げ思考・実践することと、現在の格差社会を理解して強者は弱者のことをどういう生活をしていて何が本当に必要なのかを本質的に理解し、手を差し伸べる「社会性」を発揮しなければ、ますます格差は広がり頂点がどんどん尖って行くピラミッド型の社会が出来上がっていくかもしれない。
世の中には様々な人種がおり多くの価値観がある。だからこそ意識のグローバル化を持って、世界を俯瞰的な視野で見る意識はとても大事なことなんだと改めて思う。

そして経済成長を遂げた日本人が今後アジア地域の一員として、アジアに対し世界に対しどのような成長を遂げるのか。どう共存して行くのか。新しい価値を生み出せるのか。
日本人の役割は大きい。先の大戦で受けた被害と犯した罪を両方同じ程度で認識することが、日本がアジアを新しい価値で牽引するのに必須だと思う。
21世紀、日本人の見せ所っすね。



他にも西川先生からは
・グローバル化が進む社会において、世の中を自分と切り離して客観的にみる視点を持つことが大切で、今、市民社会を見直す大きな過渡期にある
・東日本大震災以後重要視されるようになった人とのつながりは、相対的貧困を減らす試みかもしれない
・今の経済学の主流は、資本主義に格差は当たり前。財閥と国家が結びつき国家は後押し
・日本は島国なので自分たちのことを「国民」「県民」などと呼び、「市民」という概念が少ない
・保守派の人間は市民社会法も認めない
・政府や企業ができないことを市民社会がやる
・市民権に対する意識。欧米は下(市民)から変えて行くもの。アジアは上から与えられるもの
など、これまでの経験と歴史的観点から多くの貴重な指摘をいただきました。




次回、第2回目の講義は、東洋大学教授のマリア・ロザリオ・ピケローバレスカス氏による”貧困の中に生きる子供の権利を考える”です。

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