アジアの開発におけるマイクロファイナンスの意義と課題

第二回目のバレスカス先生の講義から約1ヶ月、今回第五回目の授業は公益信託アジア・コミュニティ・トラストのチーフプログラムオフィサーの鈴木真理さんによる “アジアの開発とマイクロファイナンスを考える”です。
ちなみに欠席した第三回は “農村の問題を考える”(リソースパーソン:荒川朋子(学)アジア学院 副校長)第四回は “草の根レベルでの変革を目ざすソーシャルビジネスを考える”(リソースパーソン:本村拓人(株)グランマ代表取締役社長)でした。


【プログラム】
・参加者紹介・・・塾生とリソースパーソンそれぞれの自己紹介
・塾生の発表・・・課題レポートを元に約10分のプレゼン
・リソースパーソンからのコメント・・・鈴木先生による今回のテーマに沿ったプレゼン
(休憩10分)
・全体討論・・・約1.5H、それぞれのレポートへの意見



貧困地域への金融革命「マイクロファイナンス」


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貧困層の直面する様々な制約の中で金融サービスへのアクセスの欠如が上げられます。貧困層は担保や信用がないために、銀行が提供する金融サービスを受けることができず、資金が必要になった際は親族から借りることや、質屋、インフォーマルな地域の高利貸しなどに頼り、時には100%を超える利子で借りざるを得ない状況です。その中でマイクロクレジット及び、保険や貯蓄といった金融サービスも展開する場合もあるマイクロファイナンスは、法外な金利を搾取されている貧困層にとっては金融の革命とも言われています。


途上国支援と聞いてイメージしやすいのは、慈善活動をして無償でモノを寄付することや、お金をそのまま寄付することですが、ただ受け取るだけの援助であると受け取った側は援助される一方で、結局は受け取ったものを消費するだけで終わり、再度援助されることを期待して待つだけに終わる事も少なくありません。
根本的に貧困を解決するためには、貧困層自らが収益活動を行い自助努力をすることで、長期的に貧困から脱出するための術を体得する必要があります。寄付ではなく融資として事業を行うマイクロファイナンスは、融資をする側される側双方にとってwin-winの関係を作ることができる事業です。

ただし、単にお金を借りるだけではまだ根本的な貧困を脱出することにはならず、融資されたお金をどう活かして行くかが重要であります。貧困層が持続的で安定した生活を送るためには、貧困層自らの手で生活水準を上げていく必要があり、例えば融資する側が起業のアドバイスや返済計画などの指導をし、そのために融資する側は従来の単なる貸出業務だけではなくより融資を受ける個人やそのコミュニティに対して一歩入り込んだ関わり方や支援などをすることが必要となります。
ゆえに事業を継続するためにコストや手間がかかるため、先進国の金融業と比較すると割高な金利(年率およそ20%~40%)が採用されています。


マイクロファイナンスが抱える課題


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グラミン銀行とムハマド・ユヌスのノーベル平和賞の獲得などにより、マイクロファイナンスそのもののイメージは良いものですが、世界にはマイクロファイナンスと言いつつ100%以上の高利貸しと変わりない事業を行っている組織がいくつも存在することや、マイクロファイナンスの700億ドル市場に目をつけ多額の利益を得ている資産家の登場、融資をされた途上国の人が融資された資金を別のローンの返済にまわす多重債務、生産のためではなく一般的な消費のために使ってしまうことなどマイクロファイナンスが抱える大きな課題はいくつかあります。

もう一つの主な課題として、マイクロファイナンスは最貧困層にはサービスが行き届いてない現状が上げられます。最貧困層は返済能力が低いためです。マイクロファインナンスには貧困削減の社会的役割が期待され、その為に援助基金も原資として流れ込んでいますが、それでもあくまでビジネスとして成立する事が前提であるため、最貧困層にサービスを提供する事はとても難しいのです。
ただ現在では、CGAP(Consultative Group to Assist the Poor)がフォード財団と「graduation program」という、24ヶ月で絶対貧困層ラインの人々を資金貸与可能な脆弱層ラインの上にまで引き上げるプロジェクトを進めています。プロジェクトの内容は、まず村の中で最も貧しい人を選定し、一定期間の生活保護資金と資産(牛やヤギなど)を給付し、給付された資産を活かすための勉強会や技能訓練があり、貯蓄する余裕が出ると小額でも貯蓄サービスをし始める、といった手順で行い、子供を学校に通わせることや一日ニ食を調理できることなどの一定の基準を24ヶ月で達成すれば卒業となります。

マイクロファイナンスは貧困を削減する手法としてまだ多くの期待が持たれています。
従来の銀行が融資する際の判断基準とは全く異なり、グループ・小口・低金利といったキーワードからなる特色は、経済成長を終え新しい価値へのシフトを模索している先進国にも通ずるキーワードであると思います。グローバル成長を続けてきている世界の潮流から、ヨーロッパ各地でにわかに起こりつつある独立運動や、日本の地域でも勢いのある自治体では地方分権を唱えている地域も少なくありません。国や大きな組織への嫌悪感がリージョナリズムを生み始めており、コミュニティでの共助や協力の重要性が見直されています。
「お金」や「銀行」と聞くと、信用創造の仕組みや、1%の富裕層の話しなど、あまり良いイメージを持てないこともありますが、お金というものをよりツールとして考え、単なるモノの売買のために使うものだけではなくコミュニティをより強固にする手段として使うと考えれば、マイクロファイナンスにはお金が私欲を肥やすためだけのツールではなく、より良いコミュニティを作る為のツールとして機能する可能性を感じます。使うお金は中央銀行発行のお金だけではなく、地域通貨と併用するのも良いと思います。
マイクロファイナンスや地域通貨が、村の中で課題解決のために知恵を出し合い一緒になって解決していく姿勢をつくるといったきっかけになれると思います。




マイクロファイナンスの未来。+アルファの事業


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日本財団がミャンマーで行っている、マイクロファイナンスと学校建設をセットにしたプロジェクトは個人的に興味があり、もっと多くの人の関心が高まれば、教育を満足に受けられない子供達が限りなくゼロに近づくことが実現可能なプロジェクトだと感じました。
財団から融資を受けた資金を元に人件費や建設費を厳密に計算し、建設に携わった村人の労働奉仕の費用は完成後に返金して村で基金を作り、その基金をもとに村人へマイクロクレジットの事業を展開するというプロジェクトです。
その地域は農業ができる土地も多くなく、村のある資源で事業を起こすことが難しい地域であったため、マイクロファイナンスを村の発展のための事業として選択しました。学校のない村で学校建設のために村人達でお金を出し合い、基金を作り、学校を建てる費用にあてる。マイクロファイナンスは、肥沃な土地がない場合や気候が安定しない地域など自然に左右される事業でないために、様々な地域で事業として展開することができます。


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さらに今の時代はIT化が進み、マイクロファイナンスにもITの力が加わり、より充実したサービスを展開する事例も出てきています。
「KIVA」は、世界中のマイクロファイナンス機関と提携し、KIVAのWEBサイトを通して、融資する一般の人が融資される側の途上国の事業主の素性や思い、事業の実現性などを閲覧することができ、クラウドファンディングで全世界の多くの一般の方から資金を調達し、各々の地域で事業を展開しているマイクロファイナンス機関を通して、途上国の事業主へ融資するという画期的なサービスです。


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「エムペサ」は、銀行口座を持っている一般人がとても少ないケニアで、携帯電話のメッセージ機能を利用して送金ができるサービスです。送金したい人はエムペサの代理店で現金を払って電子マネーを買い、携帯電話で相手に送り、送金を受けた相手は最寄りの代理店で電子マネーを現金化します。


今後はマイクロファイナンスに新しいテクノロジーやアイデアが加わる事で、より革新的なサービスに進化することが予想されます。特に途上国ではその発展のスピードも先進国が経てきたものより早く、そして新しいアイデアやプロジェクトにフレキシブルに対応できる国も少なくないため、途上国発のイノベイティブなマイクロファイナンスから、先進国の特に農村地域でも取り入れることができるビジネスモデルが生まれる予感がします。




次回、第6回目の講義は、ジャーナリストの麻生晴一郎氏と麻生水緒氏による”日韓・日中間の歴史とどう向き合うかを考える”です。

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